【理事長】年の瀬に想うこと
2024年が終わろうとしています。
さて今年はどんな年だったのだろう?と、毎年考えるのですが、ここ数年明るい気持ちになれません。とりわけ今年は能登半島大地震という衝撃の元旦からはじまりましたから。さらに、政治では一部政権与党の裏金問題、兵庫県知事選挙にまつわる問題、社会では、闇バイト事件の横行に、年の瀬に世間を驚愕させた殺傷事件などなど・・・。
さらに福祉を取り巻く状況も厳しさを増しています。暗い話ばかりで申し訳ありませんが、経営協(全国社会福祉法人経営者協議会)の冊子2024.12にこんな記事がありました。大切な内容だと思いますのでご紹介しておきます。
亜細亜大学経済学部、権丈英子教授の記事です。(一部抜粋)労働市場ではいま、大きな転換が起こっています。こうした状況を、私は「労働力希少社会」の到来とよんできました。日本では、少子高齢化、人口減少が進み、生産年齢人口である15~64歳の人口は、この30年程で15%も減っています。しかし、それでもまだ、就業者数は増えていました。高齢者や女性を中心とした非正規での労働供給が増加したためでした。ところが、近年の就業者増を支えてきた高齢者や女性には、これからあまり期待できなくなります。65歳~74歳の前期高齢者の人数は2022年から減り始めています。また、女性の就業率もかなり上昇し、ほかの先進国と遜色ないほど高まっています。比較的安価な労働力を企業が手軽に利用できた時代が、今、構造的に大きく変わろうとしているわけです。
ひだまり会の職員数は現在、116名ですが、約9割が女性で、平均年齢はおよそ55歳です。まさに、女性と比較的年齢が高いベテラン職員で構成されていることがわかります。
権丈教授は、さらにこう続けます。春闘(春季労使交渉)をみると、2023年からは賃上げ率が3%を超え、民間企業の初任給も大きく上がりはじめています。8月の人事院勧告では、国家公務員給与制度のアップデートを勧告し、若年層に重点を置いた約30年振りの高水準のベースアップをはじめ、かなり踏み込んだ内容を提示しています。そうした動きのなか、政府によって公定価格が決められている介護や福祉などの職種は賃上げが容易ではありません。これらの職種の需要は今後高まることが予想されるのですが、そうした需要の高まりに必要となる労働力の確保ができるほどに賃上げが行うことができなくなれば、十分な労働力が確保できなくなります。~中略~さらに教授は、医療福祉分野の従業員数は、2018年度の就業者全体の12.5%(823万人)から、2040年度には、18.8~18.9%(1065~1068万人)にと試算され、医療福祉というエッセンシャル・ワーカー「生活必須職従事者」を欠けば、生活は営めなくなります。将来、従業者のおよそ5人に1人が医療福祉分野での従業者という時代を迎えることが果たしてできるのでしょうか。と。
最後に教授は、「どのような社会をつくっていきたいのかを我々国民自身が選択していることを意識しなければなりません。「選択」とは、サービスをニーズがある人は平等に利用できる平等消費社会を選択するか、それともサービス支払能力に応じて利用できる社会を選択することだ。」と結んでいます。
新しい年がはじまろうとしています。来年、あなたはどちらの社会を選んで行きますか?